アグリテック甲子園レポート2022
2023年1月22日に「アグリテック甲子園2022」がアクリエひめじ展示場Cで開催されました。
当日のメインイベントであるアイデア発表プレゼンでは、兵庫県内の学校3チームと、群馬県や長野県等の5チームが会場で、
栃木県と熊本県の2チームがオンラインで参加いただき、計10チームがアイデアを発表してくれました!
当日のレポートを是非ご覧ください。
タイムスケジュール
第1部(13:00~14:20)
13:00 オープニング
13:05 特別講演①
東京大学大学院 農学生命科学研究科
附属生態調和農学機構
准教授 郭 威(カク イ)様
13:40 特別講演②
カルビー株式会社
セールス&マーケティングカンパニー
東日本営業本部 首都圏第二支店 営業3課
小林 篤史(コバヤシ アツシ)様
14:20 第1部終了
第2部(14:35~18:00)
14:35 オープニング
14:40 姫路市長よりご挨拶
14:45 姫路市立書写養護学校・兵庫県立大学より
Farmbotの活用事例発表
15:05 審査員紹介・審査員長よりご挨拶
15:15 アイデア発表プレゼン(途中休憩あり)
17:45 審査結果発表
17:55 全体講評
18:00 閉会
アーカイブ動画
イベントレポート
特別講演① 東京大学大学院 郭威氏
第一部特別講演①では、東京大学大学院 農業生命科学研究科 付属生態調和農学機構 郭威准教授にオンラインで登壇いただきました。
研究室で行っている研究内容や成果の紹介、世界の農業におけるAIの現状とこれからの農業の発展について「圃場画像とAIを用いた作物診断技術の開発とその応用」をテーマに参加学生と一般観覧者に向けて講演いただきました。
研究室で行っている研究の動画や画像を用いながら、新しい農業の可能性についての説明が行われました。AI技術の発展は、超省力化や生産物の品質向上を可能とする新しい農業の発展につながっています。
「これからの農業の課題は食料生産性と持続性の両立であり、農業は食料を生産する重要な産業である。この課題のために、これからは農業における植物フェノミクスについて若い世代である学生に積極的に学んでほしい。」と語り、植物フェノミクス人材育成の必要性を訴えました。講演が終わると会場からは盛大な拍手が送られました。

特別講演② カルビー株式会社 小林篤史氏
次に、特別講演②では、カルビー株式会社 セールス&マーケティングカンパニー 東日本営業本部 首都圏第二支店 営業3課 小林篤史様に
「イリゲーションと農業ITブレーンを融合させ 最大収量1.6倍へ!!」というテーマのもとオンラインでご登壇いただきました。
はじめに簡単なクイズが出題され、緊張した面持ちだった学生たちも肩の力を抜き、真剣に聴き始めました。講演では、農家の方々が抱えていたイリゲーション施設(ミスト機械等を使って人工的に水を供給する施設)の利用率の低さという問題に対し、農業ITブレーンを組み合わせることで、施設を効率的に使用し、品質を下げずにじゃがいもの収穫量を増加させることができたというお話をしていただきました。
小林さんは現実性と生産者の主体性が大切だと述べ、本講演は参加学生にとってアグリテック甲子園の審査基準の一つである「実現性」を考える上で重要なポイントを知る機会となりました。

FarmBot活用事例発表
第二部では、姫路市立書写養護学校と兵庫県立大学にFarmBotをどのように活用しているかを発表いただきました。
姫路市立書写養護学校には、FarmBotをプログラミングの学習として活用しながら農業に取り組み、農業版STEAM教育の実証として取り組んでいる内容を、兵庫県立大学には、FarmBotを応用したカモミール収穫ロボットの開発内容について、一切に取り組んでいる学生の方々に語ってもらいました。

書写養護学校 高等部1年 八木さん
書写養護学校 高等部1年 八木さんには、機能と操作、プログラミングの授業の様子、野菜の栽培、スマホのアプリで畑の栽培管理ができる農業用IoTソリューション「e-kakashi」の導入や学校行事での野菜販売等、今年度の取り組みについてお話しいただきました

書写養護学校 中学部2年 鍛示さん
書写養護学校 中学部2年 鍛示さんには、FarmBotの体験やFarmBotを使って育てた野菜を販売したり、シソジュースを作ってみたりした感想等についてお話し頂き、「実際にFarmBotを使って野菜を育てることの難しさ、プログラミングをする難しさを知った。」と語っていました。

書写養護学校 中学部2年 緒方さん
書写養護学校 中学部2年 緒方さんには、動画で発表いただきました。実際にプログラミングをして苦労したことや感想をお話しいただき、「プログラミングを学習した最初は不安だったが、何回か挑戦していくうちにプログラミングがスムーズにできるようになった」と語っていました。

兵庫県立大学大学院 工学研究科 修士1年 和田さん
兵庫県立大学大学院 工学研究科 修士1年 和田さんには、
アイデア発表プレゼン
FarmBot活用事例発表の後は、メインプログラムであるアイデア発表プレゼンを行いました。
兵庫県内の学校だけでなく、熊本県や栃木県などの遠方からもオンラインで参加して頂き、計10チームにアイデアを披露して頂きました!
各チーム3回ずつSBイノベンチャーの方からメンタリングを受けてアイデアをブラッシュアップし、プレゼンのコツなどもつかんだうえで行ったため、堂々と発表されていました。

兵庫県立姫路工業高等学校
タイソンズチーム
楽農のススメ

兵庫県立飾磨工業高等学校
園芸部チーム
家庭用農業アプリ&キット『ベジープ』

長野県佐久平総合技術高等学校
さっそうチーム
農業に革命を! ~スプリンクラーから考える未来~

岡山県立瀬戸南高等学校
瀬戸南お米プロジェクト班チーム
自動操舵システム、多数回中耕除草でらくちん農業を!

東洋大学附属姫路高等学校
PROJECT TOYOチーム
PROJECT TOYOの活動内容と鹿を使った循環社会を作るには

国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学
Agri Portalチーム
世界一の農作物ブランド創出に向けて

熊本県立熊本農業高等学校
養豚プロジェクトチーム
食料廃棄物を利用した持続可能な畜産経営の実践

栃木県立真岡北陵高等学校
食品科学研究部チーム
野菜を「知る」「買う」「食べる」そして「健康に」

広島県立西条農業高等学校
きのこチーム
魅力ある農業 稲作とキノコ栽培の循環型農業

群馬県立伊勢崎興陽高等学校
興陽6次産業化プロジェクト推進委員会チーム
6系列共同開発 新鮮野菜とフレッシュハーブを使ったピクルスづくり
審査員からは内容に関する質問だけでなく、実際にビジネスとして成立させるための鋭い質問もあり、学生たちが今後もアイデアをさらにブラッシュアップできる機会になりました。
審査結果
10チームすべての発表が終わると、会場は少し長めの休憩に入りました。
学生たちはほっとした様子で談笑したり、展示ブースを見て回ったりしていました。その間に審査員の方々は別室で協議。各賞を決めるために時間いっぱいまで白熱した議論が交わされていました。
厳正なる審査の結果、アグリテック甲子園2022最優秀賞は、「広島県立西条農業高等学校 きのこチーム」に輝きました!
その他企業賞を含め、結果をご紹介します。
最優秀賞
広島県立西条農業高等学校
きのこチーム
魅力ある農業 稲作とキノコ栽培の循環型農業

優秀賞
岡山県立瀬戸南高等学校
瀬戸南お米プロジェクト班チーム
魅力ある農業 稲作とキノコ栽培の循環型農業

SBイノベンチャー賞
群馬県立伊勢崎興陽高等学校
興陽6次産業化プロジェクト推進委員会チーム
6系列共同開発 新鮮野菜とフレッシュハーブを使ったピクルスづくり

野村アグリプランニング&アドバイザリー賞
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学
Agri Portalチーム
世界一の農作物ブランド創出に向けて

カルビーポテト賞
東洋大学附属姫路高等学校
PROJECT TOYOチーム
PROJECT TOYOの活動内容と鹿を使った循環社会を作るには

姫路市賞
熊本県立熊本農業高等学校
養豚プロジェクトチーム
食品廃棄物を利用した持続可能な畜産経営の実践

展示ブース
会場では、協力企業や大学等による農業関連の製品やサービス、開発研究の取り組みなどの展示を頂きました。実際に説明を受けたり体験したりすることにより、新しい発見や意見交換し合う場になりました。
ソフトバンク株式会社

天候や作物の生育状況、病害虫等の分析に使えるデータを収集し、最適な栽培環境に導くための判断を支援する農業AIブレーン「e-kakashi」について説明する様子
農業版STEAM教育事業
姫路市(受託者 株式会社プロキッズ)

スマート農業体験プログラムの動画と農業ロボットの操作体験が実際にできるコーナー
農業版STEAM教育の取り組み紹介
書写養護学校

ファームボットを活用したSTEAM教育の取り組み(プログラムや農作物の栽培、販売等)を紹介
「未来の農業ロボットアイディアコンテスト」受賞作品
姫路市(受託者 株式会社プロキッズ)

全国の小中学生が未来の農業についてアイディアを出す「未来の農業ロボットアイディアコンテスト」の受賞作品の展示
カモミール自動収穫ロボット
兵庫県立大学

カモミール自動収穫ロボットを実際に動かす様子
「Massive IoT」大規模センサーネットワーク向けの低コストソリューション APCMA
国立研究開発法人 情報通信研究機構

長距離送信が可能な低価格・低消費電力ネットワークシステムである「Massive IoT」大規模センサーネットワーク向けの低コストソリューション APCMAについての紹介
出場者・観覧者からの感想
出場者・観覧者アンケートで様々なコメントをいただきましたので、一部ですが、ご紹介させていただきます。
出場者の声
メンタリングサポートでは、農業高校生が苦手とする、ビジネスの考え方などを教えていただけるとても良い機会でした。
本日は、本当にありがとうございました。貴重な経験をさせていただき、この経験は私の将来に必ず役立つと思うので、本当に感謝です。
スタッフの方が優しく、施設もとてもきれいで過ごしやすかったです。姫路にまた行きたいです。ありがとうございました。
観覧者の声
どの発表もいいアイデアばかりで聞いててワクワクしました。これから農家を目指すのでとても参考になりました。
とても素晴らしく、高校生とは思えないプレゼンでした。
時間通り運営されていて、とてもよかったです。また、新しいアクリエ姫路で、良い音響やカメラなどを使ってとてもすごいイベントだと思いました。ありがとうございました。
レポート作成について
アグリテック甲子園2022の開催に向け、約半年間、企画・運営・PRのお手伝いをさせていただきました。
私たちと同世代の若い人たちにも、農業に興味を持っていただけるように、少しでも貢献できて嬉しく思っています。
来年もたくさんの学生の皆さんに参加いただけることを願っています。
レポート作成者:アグリテック甲子園2022 インターン生
左から、眞田さん・阿部さん・ペパー福井さん

アグリテック甲子園2022を終えて
昨年1月にアグリテック甲子園を初開催した時は、新型コロナウイルス感染者数が増減を繰り返している時期であり、多くの参加者がオンライン参加を選択される状況でした。今回のアグリテック甲子園では、本選出場10チーム中8チームに現地参加いただき、皆さんのプレゼンを直に拝聴することができ、感慨もひとしおでした。
世界的な人口増加により食料需要が増加する一方、地球温暖化対策を進める動きが農業分野にも広まって、生産性の向上と持続性の両立が重要な課題となる中、アグリテックへの関心もこれまで以上に高まっています。
本市におきましても、これらの課題解決に貢献できるよう、地方創生推進交付金の採択を受け、農業分野のデジタル人材育成を目的としたスマート市民農園事業を実施しています。その一事業として令和3年2月から書写養護学校と連携し、農業ロボットFarmBotを活用して身体障害者に農業体験を提供する実証を進めており、来年度には一般の障害者や障害者施設に実証を拡大していく予定です。また、昨年10月からは公募した市内の親子4組に参加いただき、農業版STEAM教育の実証を進めているところです。農業版STEAM教育では、全国の小中学生を対象に、農業ロボットアイデアコンテストも実施しています。
このスマート市民農園事業と、ハーブの里山プロジェクトの取り組みが認められ、2月9日に、地方創生担当大臣から、令和4年度企業版ふるさと納税に係る大臣賞をいただきました。
アグリテック甲子園で皆さんが真摯に取り組まれたプレゼンは、創造性と情熱にあふれ、主催者である私たち自身にとっても感銘を受け、大いに勇気づけられるものでした。

次回のアグリテック甲子園は、令和6年1月21日(日)の開催を予定しています。
アントレプレナーシップあふれる学生の皆さん、ご支援いただける企業等の皆さんとアクリエひめじに集えることを楽しみに、次回に向けた準備を進めてまいります。
姫路市農政総務課長 柿本英夫

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